交渉スキルはビジネスパーソンにとって最も重要なスキルのひとつです。
交渉は、外交、見積もり交渉、予算調整、客先営業に代表されるようなビジネスにおける重要シーンはもとより、上司への相談やスタッフへの依頼、同僚との普段の何気ないやりとりまでビジネスのあらゆるシーンで行われています。
そしてその交渉の結果は、ご自身の提案・意見が相手に納得感をもって受け入れられ成果を上げられるかどうか、ご自身の仕事が思い描いた方向に進めることができるかどうかを左右します。
つまり交渉スキル如何によってご自身の仕事の方向性が決まるといっても過言ではありません。
本記事では、交渉とは何か、交渉の原則であるハーバード流交渉術、交渉における2つの戦略について、ビジネス戦略的な側面から体系的に解説します。
著者は、宇宙開発分野で20年以上エンジニアとして数々の交渉を経験してきています。
また、最先端のスキルが学べる世界最大級のオンライン動画プラットフォームであるudmeyの講座を100講座以上受講し、今もなお日々学習を継続しています。
経験と学びの両輪から実務に有用な情報を厳選して発信していますので是非ご参考下さい。
本記事が、皆さまの交渉力向上の一助になればと思います。
【この記事を読んでわかること】
- 交渉とは何か
- 交渉以外の解決方法
- 交渉の2つの戦略(協調戦略と競合戦略)
- ハーバード流交渉術(原則立脚型交渉術)の7つのポイント
- 多数当事者間の交渉
- グローバル交渉
- 交渉力を高める、おすすめudemy講座とおすすめ書籍
■交渉とは
交渉とは、『双方の目的を達成するためにコミュニケーションを通じて、合意形成を図ること』です。
交渉は、外交、見積もり交渉、予算調整、客先営業に代表されるようなビジネスにおける重要シーンはもとより、上司への相談やスタッフへの依頼、同僚との普段の何気ないやりとりまでビジネスのあらゆるシーンで行われています。
また、プライベートでも家電製品や車、フリーマーケットでの買い物等で店員と価格交渉をしたりします。
家族間でも、家族旅行の日程や内容、予算の話し合い等、交渉はありとあらゆるシーンで日常的に発生しています。
交渉は多くの場合、大小意見の衝突がありますが、それをコミュニケーションを通して双方納得のいく形で合意に持っていく、これが『交渉』になります。

交渉以外の解決方法
では、交渉以外の解決方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
多くの場合、対立・衝突とは『現状変更をめぐる争い』で、現状を変えたい・変えたくない、という対立構造になります。
対立・衝突において、交渉以外の解決方法としては以下の2つの方法があります。
これらの方法は、交渉が決裂し、かつ双方が目的達成を諦めない場合にしばしば取られる解決方法です。

■交渉の原則 ~理想的な交渉~
交渉は、対立・衝突を解決する(乗り越える)手法のひとつですが、片方が不利な条件で妥結するのは理想的ではありません。
双方が満足できる結果(Win-Win)を得られることが理想的であり、そのための交渉術が『ハーバード流交渉術』です。
ハーバード流交渉術は、交渉の原則であり基本戦略となります。
■ハーバード流交渉術(原則立脚型交渉術)
ハーバード流交渉術(原則立脚型交渉術)は、対立・衝突を解決する(乗り越える)手段のひとつであり、双方が満足できるWin-Winの結果(『賢明な合意』)を得ようとする考え方に則った交渉スタイルです。
以下の7つのポイントがあります。
【ハーバード流交渉術の7つのポイント】
- 人と問題を切り離す
- 立場ではなく、利害に焦点を合わせる
- 双方にとって有利な選択肢を考え出す
- 客観的基準を強調する
- よいBATNA(最善代替案)を用意する
- コミットメントの仕方を工夫する
- よいコミュニケーションを維持する
なお、合意は目指しますが、合意そのものが目的というわけではなく、ときに合意しないことも賢明な判断という考え方も含まれます。

ハーバード流交渉術の7つのポイント① ~人と問題を切り離す~
誰が言ったか、私が、相手が、ではなく、『両者』にとってどのような『問題』が発生しているか、で考えます。
交渉相手は敵ではなく『一緒に問題を解決するパートナー』として扱います。
ハーバード流交渉術の7つのポイント② ~立場ではなく、利害に焦点を合わせる~
表面的な主張(立場)ではなく、背後にある本当の目的(利害)を探ります。
ハーバード流交渉術の7つのポイント③ ~双方にとってメリットのある選択肢を考え出す~
両者が納得できる選択肢を考え出します。
価格は下げられないが、納期は早められる等、オプションを提示します。
『双方の条件』を成立させるために『目的レベル』に引き上げてすり合わせていきます。
ハーバード流交渉術の7つのポイント④ ~客観的基準に基づいて決める~
感情や力関係ではなく、公正な基準で判断します。
他社に負けている、という単純比較ではなく、市場価格と比べてどうかという視点です。
また、客観的基準は『数字』で置き換えられます。数字で評価することが重要です。
ハーバード流交渉術の7つのポイント⑤ ~よいBATNA(最善代替案)を用意する~
BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)とは、交渉が決裂した場合の最良の代替案のことです。
交渉が上手くいかない場合に備え、BATNA(最善代替案)を準備しておくことで落ち着いて交渉を進めることができます。
ハーバード流交渉術の7つのポイント⑥ ~コミットメントの仕方を工夫する~
交渉は必ず何らかの『約束』をして終わります。
相手との関係性や状況に応じて、コミットメンのレベル感(口約束や契約等)を工夫します。
ハーバード流交渉術の7つのポイント⑦ ~よいコミュニケーションを維持する~
説得して1回だけ勝つ、のではなく、長期的に人間関係を継続させることを考えます。
賢明な合意(wise agreement):真のWin-Win
賢明な合意(wise agreement)とは、長期的な関係性を維持しつつ双方の目的を達成することです。
そのために、妥協ではなく創造的な第三の案をコミュニケーションを通じて『創造』することが求められます。

■2つの交渉の戦略
交渉においては、大きく分けて協調戦略と競合戦略の2つの戦略があります。
協調戦略
相手のニーズにも配慮し、双方に利益をもたらすWin-Winの可能性を広げるアプローチです。
ハーバード流交渉術に代表される交渉戦略です。
競合戦略
相手の選択肢を制限し、自身にとって有利な立場を確保するアプローチです。
限られた資源からできるだけ多くのものを得ようとする、Win-Loseの戦略になります。

■協調戦略・競合戦略をどのように使い分けるのか
競合戦略(Win-Lose)は、攻撃的で破壊的な交渉戦術であり、交渉学的には最適でないとされています。
交渉をゼロサムゲームとして認識してしまうと、両者が取引から得られるものを考えるのではなく、双方が互いに意見を主張しあうことになるからです。
しかし、すべての当事者にとって価値を生み出すことに重点を置く協調的な交渉よりも、攻撃的な交渉の方が理にかなう場合もあります。
例えば、中古車を買うときやフリーマーケットでの値切り交渉などは、争点を絞ることでお互いのリソース(時間)を節約することができます。
また、そもそも相手がWin-Winを目指しているとは限りません。
このような場合には競合戦略を用いて、自身の力を強めたり相手の力を相対的に弱めたり力関係のバランスを取ることが有効です。
したがって、長期的な関係性を維持しながら賢明な合意を得ることが出来るWin-Winの協調戦略を基本としつつ、必要に応じて競合戦略を用いて力関係のバランスを取る、というアプローチが最も効果的です。

競合戦略が必要となるケース
それでは、どのような場合に競合戦略が必要となるのかもう少し詳しく見ていきましょう。
①相手のパワーが強大な場合
相手のパワーが強大で、協調的に交渉するインセンティブが相手側にない場合は、こちらがいくら協調的な提案をしても、相手は一方的に現状変更を迫ってくる可能性があります。
このような力関係では、こちらも一定の交渉力を持つ必要があり、そのために自身の力を強めたり、相手の力を相対的に弱めたりする「競合戦略」が有効になります。
②相手の発達段階や世界観が協調的でない場合
相手の交渉スタンスは、交渉相手自身の発達段階や支配的な世界観による場合があります。
相手の成熟度によっては、相手は協調戦略を取らずパワーゲームを仕掛けてくる可能性があります。心の発達段階として『成人期』以外の場合には、協調的な解決傾向とはなりません。
このような場合には、競合戦略を用いて力関係のバランスを取ります。

③相手と長期的な関係性を維持する必要がない場合
相手と長期的な関係性を維持する必要がない場合(将来のやり取りはなく、1回切りの交渉の場合)は、こちらからビジネス戦略的に競合戦略を使うことが可能です。
これにより、時間・資金等のリソースを節約することに繋がります。
ただし、一見、長期的な関係性を維持する必要がないと思われる場合でも、ビジネスにおいては『どこで誰と再会するかわからない』という側面があるため、可能な限りWin-Winの協調戦略を基本戦略とするのがベターでしょう。

■信頼関係の構築は不可欠
交渉は、どのような交渉戦略を取るかに関わらず、相手と一定の信頼関係が構築されていることが前提となります。
約束を守らない相手とはどのような交渉も行うことができません。
また、敵対的な相手との交渉の場合、交渉の成功率は半分以下となり、交渉で得られる利益は1/4以下となるという統計データがあります。

■特に注意すべき交渉
特に注意が必要な交渉として、交渉相手が複数いる場合の多数当事者間の交渉と、交渉相手が海外企業や外国人の場合のグローバル交渉があります。
多数当事者間の交渉
これまでは基本的には二者間の交渉を想定していましたが、交渉相手が複数いる多数当事者間の交渉というシチュエーションもあります。
一対一で交渉してきた場合においても、実は隠れたステークホルダーがいたというケースもあるかもしれません。
一般的に、複数の当事者が関与することで各自の利害や優先順位が異なり、 全員の合意形成が困難になります。
多数当事者間の交渉において注意すべき点は以下の3つになります。

グローバル交渉
世界を相手にするグローバル交渉においては、何が正しくて何が正しくないかは、多くの場合文化に依存します。
実は、良くも悪くも日本は世界でも極端な国のひとつです(下図参照)。
日本は、感情を表に出さず、また対立を極端に避ける傾向があります(日本とイスラエルは対極)。また、ハイコンテクスト(文脈、空気を読むこと)であり、階級主義でありながら合意形成を重視する傾向があります。

縦軸:感情的に表現するかしないか
横軸:対立を避けるか避けないか

ハイコンテクスト:文脈、空気を読むこと
自身にも文化的な背景があり、相手にも文化的な背景があります。
多様性の中では価値観も解釈も様々です。
したがって、その違いをきちんと知っておくということが第一に重要になります。
その上で、なるべく前提を明らかにしながらファクトとロジックを積み重ねて合意形成をしていくことが有効です。
■交渉を学べるおすすめ講座(udemy)
本記事は、udemyの講座の内容の多くの部分を引用しています。交渉のビジネス戦略を学べる数あるudemyの講座から重要な部分を整理して体系的にまとめています。
ここで引用しているudemy講座はどれも交渉について高い視座から学習することができます。
以下にご紹介しますので、学習に役立ててもらえれば幸いです。
著者は本記事でご紹介する全ての講座を受講しています。

・交渉とは
・ハーバード流交渉術(原則立脚型交渉術)
・賢明な合意(wise agreement):真のWin-Win

・交渉以外の解決方法
・2つの交渉の戦略
・相手の発達段階や世界観が協調的でない場合
・多数当事者間の交渉
・グローバル交渉の注意点
・グローバル交渉(カルチャーマップ)

・信頼関係の構築は不可欠

・協調戦略・競合戦略をどのように使い分けるのか
・相手と長期的な関係性を維持する必要がない場合
またudemyの講座の中には交渉を学習できるだけでなく、ワークやトレーニングが設定されているものもあり交渉力を効果的に鍛えることが出来る講座もあります。
以下の記事でご紹介していますので、是非ご参考下さい。
■交渉を学べるおすすめ本
交渉に関するおすすめの書籍をご紹介します。
交渉を基本から戦略まで学習できる、王道の書籍になります。手元に置いて是非ご活用下さい。

『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』は、交渉術の基本書とされる世界的ロングセラー『ハーバード流交渉術』を翻訳した名著です。
駆け引きに頼らず、原則立脚型交渉を行うための王道の一冊です。
ビジネスはもちろん、日常の話し合いにも応用でき、交渉の本質を根本から理解したい人に最適の一冊です。

『戦略的交渉入門』は、日本のビジネス現場に根ざした交渉の基本と応用を体系的に学べる実務書です。
田村次朗氏と隅田浩司氏が、準備・分析・提案のプロセスを丁寧に解説し、実際のケースを通じて“戦略としての交渉”を理解できる構成になっています。
交渉を再現性のあるスキルとして身につけたい人におすすめです。

『武器としての交渉思考』は、瀧本哲史氏が京都大学で学生に教えている「交渉の授業」を一冊に凝縮したものです。
相手の利害構造を読み解き、最適な選択肢を提示するための“交渉の本質”が解説されています。ビジネスだけでなくキャリアや人間関係にも応用でき、若い読者にも刺さる実践的な内容です。
交渉を武器として使いこなしたい人に最適です。

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』は、7つのケーススタディーを通じて交渉の世界標準スキルを学べる構成が魅力です。
理論だけでなく、リアルなビジネスシーンを想定したケースが豊富で、実践的な判断力が自然と身につくでしょう。
MBAのエッセンスを凝縮した内容で、交渉の基礎を体系的に学びたいビジネスパーソンにぴったりの一冊かと思います。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
最後に交渉のポイントについてまとめておきます。
- 交渉とは、『双方の目的を達成するためにコミュニケーションを通じて、合意形成を図ること』です。
- 交渉以外の解決方法には、①力による一方的な解決と、②法による強制解決があります。
- 交渉には、協調戦略(Win-Win)と競合戦略(Win-Lose)の2つの戦略があります。協調戦略を基本戦略とし、要すれば競合戦略で力関係のバランスを取るのが有効です。
- ハーバード流交渉術(原則立脚型交渉術)は、対立・衝突を乗り越える手段のひとつであり、双方が満足できる『賢明な合意』を得ようとする考え方に則った交渉スタイルです。
- 多数当事者間の交渉では、全員の合意形成が困難になるため、ファシリテーションのスキルが重要です。
- グローバル交渉では、正しさは文化に依存します。自分も多様性の一部であることを理解し、ファクトとロジックを積み重ねて合意形成を図ることが重要です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
交渉はビジネスだけでなく車や家電などの日常の買い物、旅行についての家族との会話など人生のあらゆる場面で登場します。
皆さまが交渉・調整・営業スキルを身に着け、日々の業務だけでなく人生そのものが少しでも理想的な方向に近づくことを祈っております。
■【補足】Udemy修了証明書(受講履歴)
著者は、本記事でご紹介する全ての講座を受講しています(修了証明書貼付)。
Udemyは受講し終えた講座については修了証明書をもらえるので、これもまた生涯学習のモチベーションになります。







