交渉スキルはビジネスパーソンにとって最も重要なスキルのひとつです。
交渉は、外交、見積もり交渉、予算調整、客先営業に代表されるようなビジネスにおける重要シーンはもとより、上司への相談やスタッフへの依頼、同僚との普段の何気ないやりとりまでビジネスのあらゆるシーンで行われています。
そしてその交渉の結果は、ご自身の提案・意見が相手に納得感をもって受け入れられ成果を上げられるかどうか、ご自身の仕事が思い描いた方向に進めることができるかどうかを左右します。
つまり交渉スキル如何によってご自身の仕事の方向性が決まるといっても過言ではありません。
本記事では、交渉全体のプロセスと交渉準備について体系的に解説します。
『交渉の8割は準備で決まる』と、交渉学・ハーバード流交渉術の文脈ではよく言われています。
交渉全体のプロセスとその中で最も重要なフェーズである『交渉準備』について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
著者は、宇宙開発分野で20年以上エンジニアとして数々の交渉を経験してきています。
また、最先端のスキルが学べる世界最大級のオンライン動画プラットフォームであるudmeyの講座を100講座以上受講し、今もなお日々学習を継続しています。
経験と学びの両輪から実務に有用な情報を厳選して発信していますので是非ご参考下さい。
本記事が、皆さまの交渉力向上の一助になればと思います。
【この記事を読んでわかること】
- 交渉の全体プロセス
- 交渉準備の重要性
- 交渉相手の状況をどのように把握するのか
- ZOPA(交渉可能範囲)とは
- BATNA(最善の代替策)とは
- 交渉を有利に進める交渉戦術とは
- 交渉力を高める、おすすめudemy講座とおすすめ書籍
■交渉のプロセス
交渉は大きく、『準備段階』と『交渉段階』に分かれます。
『準備段階』では、交渉相手の状況をリサーチすることで交渉の選択肢である、ZOPA(交渉可能範囲)、BATNA(最善の代替策)を準備し、交渉のシナリオをイメージします。
ZOPA、BATNAについては後述します。
『交渉段階』は、実際に交渉・商談を進める段階になります。
相手のニーズをヒヤリングし、双方のニーズを満たす解決策、創造的なアイデアや代替案を出し合い、合意形成に持っていきます。

■準備段階
『交渉の8割は準備で決まる』と、交渉学・ハーバード流交渉術の文脈ではよく言われています。
つまり、交渉の結果は準備段階でほぼ決まっている、と言っても過言ではありません。
しっかりと準備して臨むことが肝要です。
準備する時間がないときでも、5分でもよいので状況を整理して臨みましょう。

交渉の準備は、交渉のシナリオをイメージしつつ以下の順序で行います。

■交渉相手の状況を把握する
交渉に入る前に交渉相手の状況を分析・把握しておくことは、Win-Winの交渉を達成する上で、また相手のZOPA(交渉可能範囲)、BATNA(最善の代替策)を精度高く予測する上で非常に重要です。
ZOPA、BATNAについては後述します。
(1)フレームワークを使って大枠を把握する
まずは、フレームワークを使って相手の状況を大きな枠で分析します。
状況把握に使えるフレームワークとして『OPQ分析』、『3C分析』、『ジョハリの窓』の3つをご紹介します。
調査の方法としては、インターネットの情報や公的な情報、社内の過去の取引情報等、入手可能な情報を元にする方法と、交渉前に相手にヒヤリングを行うという2つの方法があります。
①OPQ分析
OPQ分析は、交渉相手の状況を『Objective(目的)』、『Problem(問題)』、『Question(質問)』の3つの切り口から分析するフレームワークです。

②3C分析
『3C分析』は、交渉相手の状況を『Customer(顧客、市場)』、『Competiter(競合)』、『Company(企業)』の3つの切り口から分析するフレームワークです。
OPQ分析に比べ高く広い視点から考えることができます。
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③ジョハリの窓
交渉における様々な情報について、相手の『既知・未知』、こちらの『既知・未知』を整理するフレームワークです。
相手が気付いていない事実を把握することができ、交渉力を高めることが出来ます。

(2)個別に具体的な状況を把握する
フレームワークを使って大枠の状況を把握したら、もっと深堀りした方がよい項目について具体化していきます。具体化するための6つのポイントをご紹介します。
【ポイント①】交渉前のヒヤリングは不可欠
交渉段階(実際の交渉・提案)に入る前に相手に時間を取っていただき、可能な限り状況を確認しておくことは交渉を成功させるために非常に重要になります。
特にプロポーザルや合い見積もり等、交渉に際して競合他社がいる場合には不可欠と言えます。
【把握するべき要素】
- 目的確認(実現させたいことをヒヤリング)
- 問題確認(実現させるための課題をヒヤリング)
- 状況確認(コンペティター(競合相手)の状況をヒヤリング)


【ポイント②】実現させたいこと(交渉相手の目的)の整理の仕方
交渉相手は、役職等、立場によって目的のレベル感が異なります。
交渉相手の立場によって目的を『経営レベル』、『マネジメントレベル』、『オペレーションレベル』に分けて考えると整理しやすくなります。

【ポイント③】交渉相手の利害関係者を把握する(マッピング)
交渉相手は、目の前の担当者だけではありません。
利害関係者の相関図(マップ)をイメージし、その上で決定に影響力を持つ『キーパーソン』を把握しアプローチすることが重要です。

【ポイント④】根回し(事前のコミュニケーション)が必要な時
『キーパーソン』に加え、『フィクサー』、『アンチ』、『サポーター』と事前にコミュニケーションを取っておくことも有効です。
『根回し』と言うと聞こえがよくないかもしれませんが、『事前のコミュニケーション』と位置付けて積極的に行うことで交渉の成功率が高まります。
何度も足を運び、『ザイオンス効果(単純接触効果)』を狙って普段から”接点”を持っておくことも作戦のひとつとなります。
ザイオンス効果とは、接する回数が増えることで好印象を持つようになる心理的現象のことです。


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【ポイント⑤】定量・定性的な事実把握
可能であれば、インターネットの情報や公的な定量情報だけでなく、現場のリアル(定性情報)も把握しておくとよいでしょう。
『三現主義』という現場を重視する考え方があります。
『現場』に足を運び、『現物』を見て触った上で『現実』を把握・理解するというものです。
現場を把握することで交渉の説得力が増します。

【ポイント⑥】時間軸・タイムスケジュールの確認
タイムプレッシャーは交渉上大きな圧力となります。
時間的なプレッシャーが無く『待てる相手は強い』です。『譲歩の8割は利用可能な時間の最後の2割で起こる』とも言われています。
従って、自身のスケジュールと共に、相手の購入・予算策定の日程やいつまでにプロジェクトを進める必要があるのかなど、基本的なタイムスケジュールを押さえておくことは非常に有効です。
また、『受容時間』も重要になります。
受容時間とは、相手が期待通りのものを得られないということを受け入れるのにかかる時間のことで、大きな要求をした場合には、受け入れてもらうために『間を空ける』という日にち薬も有効になります。

■交渉の選択肢を準備する
交渉に入る前に『交渉可能範囲』を予測することと、交渉が成立しなかった場合に備え『代替案』を考えておくことが非常に重要になります。
(1)ZOPA(交渉可能範囲)を把握する
交渉は、ある範囲でもって行われることが通常で、交渉が成立する可能性がある範囲のことを『ZOPA(Zone Of Possible Agreement)』(交渉可能範囲)と言います。
交渉に先立ち、まず『交渉可能範囲』が存在するかどうかを検討します。
【交渉可能範囲の検討①】
- 自分の希望条件
(例)20万円でどうだろう? - 相手の希望条件
(例)40万円が基本価格(ホームページ等)
⇒⇒⇒ 交渉可能範囲(ZOPA)が存在しない。
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上記の例では、交渉可能範囲(ZOPA)が存在しないことになります。
ただし一方で、希望条件の他に腹の中では最低条件がある場合があります。
【交渉可能範囲の検討②】
- 自分の最低条件(これを超えたら決裂)
例:35万円までならお願いしたい - 相手の最低条件(予想する)
例:25万円までなら引き受けたい
⇒⇒⇒ 交渉可能範囲(ZOPA)は『25万円~35万円』となる。
![udemy講座:[超入門]交渉が苦手な人のための「交渉術の基本」 YESを勝ち取るためのシンプルな思考法](https://somayuri-spacelabo.com/wp-content/uploads/2026/02/negotiation_skb_learn_lecture_02_zopa2-1024x762.png)
上記例の場合、ZOPAは、25万円~35万円になります。
理論上は、自分と相手の最低条件の間であれば交渉が成立する、ということになります。
この最低条件のことを『留保価値』といいます。
(2)BATNA(最善の代替策)を準備する
BATNA(Best Alternative To Negotiated Agreement)とは、交渉が成立しなかった場合に取り得る『最善の代替策』のことです。
交渉が成立しなかった場合に備え代替策をいくつか考えておき、比較検討した上で代替案としてベストのものを用意しておくことで安心して冷静に交渉に臨むことが出来ます。
![udemy講座:[超入門]交渉が苦手な人のための「交渉術の基本」 YESを勝ち取るためのシンプルな思考法](https://somayuri-spacelabo.com/wp-content/uploads/2026/02/negotiation_skb_learn_lecture_03_batona1-1024x766.png)
(3)選択肢を準備する(意思決定マトリクス)
BATNAを準備する際に有力な代替案が複数ある場合には、それらを比較し整理しておく必要があります。
代替案や選択肢の整理には『意思決定マトリクス』が有効です。
交渉相手に対して何かしらの提案を行う場合の選択肢の準備と判断軸の整理にも有効です。
![udemy講座:[超入門]交渉が苦手な人のための「交渉術の基本」 YESを勝ち取るためのシンプルな思考法](https://somayuri-spacelabo.com/wp-content/uploads/2026/02/negotiation_skb_learn_lecture_11_decision-1024x719.png)
■交渉の戦術 ~交渉を有利に進める~
交渉を有利に進めるための戦術を4つご紹介します。
(1)最初の主張は高め(期待値以上)に要求すべきか?
価格などの最初の要求をどこに置くべきか多くの方が迷われると思います。
メリット・デメリットがありますが、一般論として、まずは高めの要求を出すのが有効ということが言われています。
大きな理由としては、アンカリングの効果と交渉の余地(値段を下げることはできても、後から上げることは難しい)が生まれる事です。

(2)自分から先に具体的なオファーをすべきか?
オファーを自分から先に出すべきか、相手に先に提示してもらうか、については大きな差はありませんが、デメリットである利益の取りこぼしを防ぐために相手から先にオファーをしてもらうのを基本とすることがよいでしょう。
一般論としては、相手に先にオファーを出させるのを基本にしながら難しいときはこちらから提示することが良いと言われています。

(3)相手のBATNA(代替策)を弱める
交渉力を強める方法として、自身のBATNAを強める(交渉が決裂した際の選択肢を強める、増やす)こと以外に、相手のBATNAを弱めるという手法もあります。
相手が相手自身のBATNAに対して理解が不十分であった場合、相手の理解を促す情報を提供することで、相手は自分自身で選択肢を減らしていきます。
(例):MBAを取得するためにどこの大学を選ぶか
- ハーバード大学 : 実は、学費が高い、受講者が若い
- BOND大学 : 実は、オンラインで受講が可能
⇒⇒⇒ 相手がまだ知らない情報(『実は、、』の部分)を提供
⇒⇒⇒ こちらから提案しなくても相手自身で選択肢を減らしていく
相手がまだ知らない情報(『実は、、』の部分)を提供することで、こちらから提案しなくても相手自身で選択肢を減らしていきます。

また、相手の選択肢を整理してあげることも有効です。
その中では「現状維持(何もしない)」という選択肢を含め、それを取り得るかどうかを考えさせることが重要です。

(4)自分に最終決定権があると思わせた方がよいのか、よくないのか?
自分に最終決定権があると思わせた方がよいのか、よくないのか、についても、メリット・デメリットがありますが、一般論としては、『最終決定権を持っていない』とした方が有利に働くといわれています。
これは、相手が自分さえ取り込めばよいと考える、また自分に決断を迫られてしまう、ということが大きいでしょう。

■交渉を学べるおすすめ講座(udemy)
本記事は、udemyの講座の内容の多くの部分を引用しています。交渉の流れと事前準備について学べる数あるudemyの講座から重要な部分を整理して体系的にまとめています。
ここで引用しているudemy講座はどれも交渉について実践的な内容を学習することができます。
以下にご紹介しますので、学習に役立ててもらえれば幸いです。
著者は本記事でご紹介する全ての講座を受講しています。

・■交渉のプロセス
・■準備段階
・③ジョハリの窓
・【ポイント①】交渉前のヒヤリングは不可欠
・【ポイント②】実現させたいこと(交渉相手の目的)の整理の仕方
・【ポイント③】交渉相手の利害関係者を把握する(マッピング)
・【ポイント④】根回し(事前のコミュニケーション)が必要な時
・【ポイント⑤】定量・定性的な事実把握

・■準備段階
・【ポイント⑥】時間軸・タイムスケジュールの確認
・(1)最初の主張は高め(期待値以上)に要求すべきか?
・(2)自分から先に具体的なオファーをすべきか?
・(3)相手のBATNA(代替策)を弱める
・(4)自分に最終決定権があると思わせた方がよいのか、よくないのか?
![udemy講座:[超入門]交渉が苦手な人のための「交渉術の基本」 YESを勝ち取るためのシンプルな思考法](https://somayuri-spacelabo.com/wp-content/uploads/2025/10/Negotiation-Udemy1-introduction.jpg)
・②3C分析
・【ポイント④】根回し(事前のコミュニケーション)が必要な時
・(1)ZOPA(交渉可能範囲)を把握する
・(2)BATNA(最善の代替策)を準備する
・(3)選択肢を準備する(意思決定マトリクス)
またudemyの講座の中には交渉を学習できるだけでなく、ワークやトレーニングが設定されているものもあり交渉力を効果的に鍛えることが出来る講座もあります。
以下の記事でご紹介していますので、是非ご参考下さい。
■交渉を学べるおすすめ本
交渉に関するおすすめの書籍をご紹介します。
交渉の基本・プロセスを学習できる、王道の書籍になります。手元に置いて是非ご活用下さい。

『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』は、交渉術の基本書とされる世界的ロングセラー『ハーバード流交渉術』を翻訳した名著です。
駆け引きに頼らず、原則立脚型交渉を行うための王道の一冊です。
ビジネスはもちろん、日常の話し合いにも応用でき、交渉の本質を根本から理解したい人に最適の一冊です。

『戦略的交渉入門』は、日本のビジネス現場に根ざした交渉の基本と応用を体系的に学べる実務書です。
田村次朗氏と隅田浩司氏が、準備・分析・提案のプロセスを丁寧に解説し、実際のケースを通じて“戦略としての交渉”を理解できる構成になっています。
交渉を再現性のあるスキルとして身につけたい人におすすめです。

『武器としての交渉思考』は、瀧本哲史氏が京都大学で学生に教えている「交渉の授業」を一冊に凝縮したものです。
相手の利害構造を読み解き、最適な選択肢を提示するための“交渉の本質”が解説されています。ビジネスだけでなくキャリアや人間関係にも応用でき、若い読者にも刺さる実践的な内容です。
交渉を武器として使いこなしたい人に最適です。

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』は、7つのケーススタディーを通じて交渉の世界標準スキルを学べる構成が魅力です。
理論だけでなく、リアルなビジネスシーンを想定したケースが豊富で、実践的な判断力が自然と身につくでしょう。
MBAのエッセンスを凝縮した内容で、交渉の基礎を体系的に学びたいビジネスパーソンにぴったりの一冊かと思います。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
最後に『交渉準備と戦術』のポイントについてまとめておきます。
- 交渉のプロセスは大きく『準備段階』と『交渉段階』があります。
- 交渉の8割は準備で決まります。しっかりと準備して臨むことが肝要です。
- 交渉相手の状況を把握するには、フレームワークを使って大枠を把握した上で、深堀りすべき内容を具体化していきます。
- 『ZOPA(Zone Of Possible Agreement)』とは、『交渉可能範囲』のことです。交渉は自分と相手の留保価値の間で成立します。
- 『BATNA(Best Alternative To Negotiated Agreement)』とは、『最善の代替策』のことです。BATNAを用意しておくことで安心して冷静に交渉に臨むことが出来ます。
- 交渉を有利に進めるには、相手から先に具体的なオファーを提示させ、こちらの主張は高めに設定します。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
交渉はビジネスだけでなく車や家電などの日常の買い物、旅行についての家族との会話など人生のあらゆる場面で登場します。
皆さまが交渉・調整・営業スキルを身に着け、日々の業務だけでなく人生そのものが少しでも理想的な方向に近づくことを祈っております。
■【補足】Udemy修了証明書(受講履歴)
著者は、本記事でご紹介する全ての講座を受講しています(修了証明書貼付)。
Udemyは受講し終えた講座については修了証明書をもらえるので、これもまた生涯学習のモチベーションになります。



![udemy修了証明書_[超入門]交渉が苦手な人のための「交渉術の基本」 YESを勝ち取るためのシンプルな思考法](https://somayuri-spacelabo.com/wp-content/uploads/2025/11/Negotiation-Udemy1-introduction.jpg)






