PMP(Project Management Professional)資格を取得する『メリット』と『デメリット』について整理しました。
PMPとはどんな資格なのか調べている方、PMPを受験しようか検討されている方、またPMPを既に持っている方で資格を更新するか否かでお悩みの方は、ぜひご参考下さい。
■メリット
【メリット1】プロジェクトマネジメントの知識を体系的に学べる
PMP(Project Management Professional)資格は、PMBOK(the Project Management Body of Knowledge)と呼ばれるプロジェクトマネジメントに必要な知識を体系的にまとめたガイドブックに基づく資格試験です。
従って、PMP試験に向けた学習の過程でプロジェクトマネジメントの知識・技法を体系的に学習することになります。
PMBOKは4年に1回程度の頻度で改訂されており、2025年現在、PMBOK第7版(2021年発行)が最新版となっています。
著者がPMPを取得したのは第6版時点でしたが、PMBOKの体系は第7版で大きく変革し、第6版までのウォーターフォール型プロジェクト中心の体系から、アジャイル型も当然に含まれる体系として再整理された形となっています。
このようにPMP資格取得に向けて勉強することで最新のプロジェクトマネジメントの知識・技法を体系的に学ぶことができます。
【PMBOK第7版の構成】
●プロジェクトマネジメント標準(12の原理・原則)
1.スチュワードシップ
2.チーム
3.ステークホルダー
4.価値
5.システム
6.リーダーシップ
7.テーラリング
8.品質
9.複雑さ
10.リスク
11.適応力・回復力
12.変革
●プロジェクトマネジメント知識体系(8つのパフォーマンス領域)
1.ステークホルダー
2.チーム
3.開発アプローチとライフサイクル
4.計画
5.プロジェクト作業
6.デリバリー
7.測定
8.不確実性
【メリット2】課題解決・アイデア創出、実務への活用
日経転職版の調査によると、PMPは「役立つ資格ランキング」の総合トップです。
このアンケート調査は、保有している資格について自己評価(仕事で役に立った)と他者評価で点数付けを行い合計点でランキングしたもので、PMP資格が実務レベルで有用であることが分かります。
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PMP資格に向けた学習の過程において、プロジェクトマネジメントに関する知識だけでなく様々なマネジメント技法の概要についても学習することになります。
これにより実務における課題へのアプローチ方法、またアイデア創出の際の切り口の引き出しが増えます。
著者は、PMP試験の勉強中、仕事における類似状況が思い浮かばれ、「あのときこうしておけばよかったのか」、「この作業もプロジェクトマネージャの仕事に含まれるのか」など目からうろこが出る感覚を何度も味わいました。
PMBOKはプロジェクトマネジメントのグローバルなデファクトスタンダード(事実上の標準)です。
実務において課題や悩みに直面した際に、解決のための拠り所になることでしょう。
【メリット3】プライベート、ボランティア活動でも活きる
PMPで学習した内容の活用範囲はビジネスに留まりません。
プライベートやボランティア活動においても活用できます。
著者はボランティアでスポーツ団体の指導者をしていますが、団体の運営やチームビルディングに関してPMPで学習した事を自然と活用しています。
活動を推進するため、また課題を解決するために状況・環境に合わせてどのような角度からどのような方法でアプローチしていくのが最適か考える思考プロセスは応用が利きます。
プライベートでも調整ごとや交渉する場面は多々あるでしょう。
なお、PMP資格の更新要件として3年間で60時間の職務能力開発活動を実施する必要がありますが、「ボランティア活動」も時間計上の対象とされています。
PMPで学習した内容を活用できるシーンはビジネスに限りません。
【メリット4】転職に有利、市場は需要高
レバテックのITエンジニア・クリエイターに関する正社員・フリーランスの市場動向調査によると、プロジェクトマネージャ(PM)の正社員求人数は他のカテゴリの求人数と比較して最多であり、前年同月比125.7%で右肩上がりの高需要、となっています。
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その背景には様々な企業でIT化が進められプロジェクトが次々と立ち上がっていること、またIT技術の発展、AI、IoT活用によりプロジェクトが複雑化していることがあげられるでしょう。
今後もそのようなプロジェクトが増えると予想できるため、プロジェクトマネージャーは将来的にも市場価値が高いと考えられるでしょう。
PMP資格を取得することによって、プロジェクトマネジメントの経験値、知識を有していることを社内外へ証明し、こうした市場の需要に応えることが可能であることを客観的に示すことができます。
転職活動でのアピールポイントになるでしょう。
【メリット5】キャリアップ・商談に有利
PMI(Project Management Institute)のマーケットリサーチ部門が実施した、日本人866人を含むアンケート調査(13th Edition(2023))によると、多くの回答者はPMP資格が自身のキャリアにとって価値があると回答しています。
PMP資格を取得するとプロジェクトマネージャとしての専門性を示すことができるため、上司やクライアントからの信頼度が高まり、重要なポジションを任されたり昇進にもポジティブな影響があるでしょう。
Further, many survey respondents feel that the PMP certification
出典:PMI公式サイト Project Management Salary Survey 13th Edition
is valuable to their career, though this sentiment also varies
between countries.
合格するとデジタルバッジがもらえ視覚的に証明することも可能です。
もちろん名刺にロゴを入れることも可能です。商談やビジネスでも有利に働くでしょう。
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PMPデジタルバッジについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考下さい。
【メリット6】年収アップ・年収1100万円以上も
PMIのアンケート調査(Project Management Salary Survey 13th Edition)によると、日本のPMPホルダーの平均年収は1133万円(ボーナス・手当等含む)になります。
これは他の職種と比較してもトップレベルの高水準な年収です。
PMPホルダーの年収については、以下の記事でも詳細にまとめていますのでご参考下さい。
【メリット7】人的ネットワークの拡大
PMPを取得したら、または取得する過程のおいても、志を同じくする人達との様々な出会い・コミュニティがあります。
上手く活用すれば人的ネットワークの拡大します。
PMI会員
PMI会員(有料)になれば、70万人以上が参加している世界最大のプロジェクトマネジメントコミュニティに属することになります。
プロジェクトの成功を目指す、先見性のある思想的なリーダーや専門家と意見交換が出来たり、有意義なつながりを築くことが可能です。
PMI日本支部会員
PMI日本支部会員(有料)のメンバーになれば、PMI日本支部が運営する研究会、スキルアップセミナーなど様々な活動へ参加することが可能です。
受講するセミナーによっては、対面形式やグループセッションなどを行うケースもあり、同じ志を持った仲間と繋がることができます。
企業内のプロジェクトマネジメントに関するコミュニティ
所属する企業内にプロジェクトマネジメントに関する研究会や同好会などのコミュニティがあれば、参加することで人脈を広げることが可能です。
これらの活動を通じてネットワークを広げ、スキルアップアップを図ることができます。
【メリット8】比較的取り組みやすい資格
インターネットの情報によるとPMP資格の合格者の勉強時間は概ね100時間程度、合格率は60~70%程度と言われています。
100時間は長いと感じる方もいるかと思いますが、これだけメリットの多い有用な資格が100時間程度の勉強時間で取得できてしまうというのは、他の様々な資格と比較してもタイムパフォーマンスが高い資格だと言えます。
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また、PMP試験は自宅でのオンライン受験も可能で、かつご自身のスケジュールに合わせて試験日程を選択することができます。
この程度の勉強量でこれだけ高い合格率、受け易い資格はなかなか珍しく、実のところ比較的取り組みやすいと言えるでしょう。
PMP資格が難しいと感じている方は、以下の記事が参考になります。
【メリット9】資格を取るなら、「今」がベスト
プロジェクトマネジメントの技術は日々進化しています。
特にAI技術は日進月歩であり、プロジェクトマネジメントの技法においてもAIの活用が当然に組み込まれつつあります。
その変化は急速で、PMBOK第7版で内容に大きな変化があったように今後も大きな改訂が発生していくことは容易に想像がつきます。
さらに、AI活用については欧米が先行しているため、日本企業においては実務との間にギャップも大きくなり、理解がより難しくなることが予想できます。
ガートナー社の研究(the Gartner Program & Portfolio Management Summit)によれば、2030年までにプロジェクトマネジメントのタスクの80%がビッグデータ、機械学習、自然言語処理などを搭載したAIによって管理運営されると予測しています。
既にPMIもプロジェクトマネジメントにAIを組み込むためのガイド(AI Essentials for Project Professionals)を発行しています。
つまり、あとはいつ標準化されるか、ということです。
PMP試験に置き換えれば、今後、着実に試験範囲は広くなっていき難易度は相対的に高くなっていくことが予想できます。
資格を取るなら合格し易さ、学び易さから考えれば、やはり早い方がよく「今」がベストということが言えるかと思います。
【メリット10】国際的な活躍の機会が広がる。英語の学び直しも
PMPはアメリカに本部を持つPMIが認定しているプロジェクトマネジメントに関する国際的な資格であり、資格を取得するために学習するPMBOKはプロジェクトマネジメントのデファクトスタンダードとして位置づけられています。
「PMI人材ギャップ・レポート(PMI Talent Gap Report)」によれば、プロジェクトマネジメントスキルを必要とする業務の数の増加などにによって、2030年までに2,500万人の新たなプロジェクトマネジメントの専門家が世界経済で必要になると予測されています。
PMP資格保有者は、グローバルなプロジェクトで活躍する機会が増えるでしょう。
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グローバルに活躍するには英語スキルは欠かせません。
また、PMPの受験申請をするにあたり、『プロジェクトマネジメントの実務経験』と『受講したプロジェクトマネジメント研修』について、申請フォームに英語で記入しなければなりません。
翻訳サイトを使えば簡単なのですが、これを機に先を見据えて英語の学び直し・スキルアップをするのはいかがでしょうか。
余談ですが、著者は英作文の勉強を兼ねてgoogle翻訳は使っていません。
英語の学び直しについてはこちらの記事もご参照ください。
■デメリット
メリットが多いPMP資格ですが、デメリットについても整理しておきます。
関連情報として、以下の記事もご参考下さい。
【デメリット1】受験資格を得るために、プロジェクトマネジメントに関する一定の経験と研修が必要
PMPの受験資格を得るためには、プロジェクトマネジメントに関する一定の経験と研修が必要になります。
【PMP受験資格】
●プロジェクトマネジメント経験
・中等教育(高校、専門学校、短大等含む)卒業者で最低5年(60か月)の固有で重複していないプロフェッショナル・プロジェクトマネジメント経験が必要。
・4年生大学卒業者で最低3年(36か月)の固有で重複していないプロフェッショナル・プロジェクトマネジメント経験が必要。
●プロジェクトマネジメントの公式研修
・35時間の公式な研修の受講が必要
受験申請から試験までの流れについては以下の記事をご参考下さい。
資格を取りたいと思い立ったとしても受験資格を満たしていない場合には受験することが適いません。
会社員の方の場合、悩ましい事としてプロジェクトマネージャ(PM)としての経験は自主的に積めるものではなく、まず上司から任命されなければプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダ(PL)にはなれないということです。
特に社会人になりたての方はすぐにはPMには任命されにくいのでやはり下積みが必要になります。
但し、PMやPLではなかったとしても、プロジェクトマネジメントを部分的に経験することは可能です。例えば、スケジュールを立て進捗を管理、報告した、という作業でもマネジメントの経験としてカウントして問題ありません。
塵も積もれば山となります。経験を積み重ねていきましょう。
【デメリット2】資格取得に高額な費用と手間がかかる
PMPの受験費用は655米ドル(PMI非会員)と非常に高額です。
近年は円安(約150円/ドル)が続いているですので、試験料は約10万円とかなり高額です。
受験料はPMI会員になると優遇がありますが会費が別途かかります。
PMI会員になって受験し、合格後、次回のPMI会員の更新をしないというやり方が最も費用を抑えられます。
また、会社員の方は会社から受験費用の補助が出るのか確認しておくとよいでしょう。
初回受験料 | 再受験料 | 更新料(3年毎) | 備考 | |
---|---|---|---|---|
PMI会員 | 405ドル | 275ドル | 60ドル | |
非会員 | 655ドル | 375ドル | 150ドル | ※2024年10月現在、初回受験料が改定となりました(555⇒655ドル) |
初年度会費 | 更新(1年毎) | |
---|---|---|
PMI会員 | 139ドル | 129ドル |
PMI日本支部 | 50ドル | 50ドル |
【デメリット3】受験申請は英語
PMPの受験申請はPMIの公式サイトから行いますが、基本的に英語になります。
公式サイトには言語選択窓があり日本語に翻訳可能なページもありますが、申請フォームは英語です。
申請フォームにプロジェクトマネジメント実務経験をひとつひとつ英語で記入していく必要があります。
特に英語が苦手な方にとっては、非常に手間がかかるのではないでしょうか。
申請方法については以下の記事でまとめていますのでご参考下さい。
【デメリット4】資格更新は3年毎。更新費用と60時間の職務能力開発活動が必要
PMP資格は合格して終わりではありません。
資格を維持するには3年毎に更新が必要になります。
その際に更新要件として、3年間で60時間以上の職務能力開発活動(PDU獲得)を行う必要があり、これがなかなか手間がかかり、資格の更新をあきらめたりサスペンドしたりする方も多いようです。
職務能力開発活動には、プロジェクトマネジメントに関する教育研修を受講したり、読書やボランティア活動など10種類の活動方法があります。
また、更新費用は以下のとおりです。
更新費用はPMI会員だと60ドルと割安に見えますが、PMI会員になるためには別途以下の費用がかかるため、費用面だけ見ると非会員の方が出費を抑えられます。
PMP資格更新については、以下の記事でまとめてありますのでご参考下さい。
【デメリット5】監査に選定された場合、エビデンスの提出が必要
PMIはPMP試験の申請者の一部に対して申請内容の監査を行っています。
どのような基準で監査対象に選定されるのかは公表されていませんが、監査に選ばれた場合には、適切なエビデンス(補足書類)の提出が求められます。
【監査における補足書類】
- 卒業証書
- 申請者のプロジェクトマネジメント実務経験を保証できるプロジェクトのスーパーバイザーやマネージャーによる署名
- 申請者がプロジェクトマネジメント教育を受けたことを保証するための教育機関発行の認定書
なお、監査については、PMP更新の手続きにおいても行われます。
著者は現在のところ運よく監査には選ばれていませんが、エビデンスの収集にはなかなか手間がかかりそうです。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
以下、PMPのメリット・デメリットをまとめておきます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
PMPは著者が取得してきた資格の中で仕事上最も役に立つ資格のひとつです。
少しでも皆さまのお役に立てたなら幸いです。